よく、男の和服着物はなぜこんなに高いのですか?と聞かれます。
皆さんが不思議に思うところではないでしょうか?
ここでは価格相場、その理由,さらに男の和服着物を誂えた際の全料金についてお話していきます。
では、始めていきましょう。
結論
・高価格の理由は、定価が無い、礼装にシフトした、中間業者の存在などが考えられます
・価格相場はアイテムにもよりますが、数千円から数十万するものもあります。
ライン@のアカウント変更しました!(2021年2月13日)
目次
1.基本知識(構造)
現状
・ほとんどの和服着物は高額です。
・値引き販売が主流です。(値引きをしないお店も沢山あります)
・生産数が少ないです。
・ユーザーも減少傾向にあります。(2016年度の市場規模は約2890億円です)
・消費者と生産者の間に「問屋(とんや)」が入る事が多いです。
理由
A.昔から定価販売の習慣がなかった。(江戸時代の三井越後屋は、例外的に定価販売でした)
伝統的な屋敷売り(得意先の屋敷に上がって商売する事)では顧客によって商品の価格を変えて販売しておりました。
現在の呉服屋でも、値引き販売が当たり前になっております。
値引き販売は「定価」を「定価では無く」してしまいます。
売れない分、売れる人から利益を取る仕組みになりました。
B.高額品に業界がシフトした。
同じく一人一人のお客様に負担して頂く構造です。
昭和中期に売れなくなった際、呉服屋が高額な礼装に絞って戦略変更しました。
元々の材料を低く抑え、価格は維持しました。
C.中間業者の存在。
問屋さんが中間に入り、揃えられる商品の量を調整していました。
メリット
・(小売・消費者にとって)いろいろなメーカーの商品を一度に見られる事。
・(小売にとって)納期管理や支払い代行などの機能を持っている事。
・(メーカーにとって)販売ルートを持たなくても良い事。
メーカーと小売店双方に利点です。
デメリット
・(小売・消費者にとって)価格が高くなる事。
・(メーカーにとって)価格が低くなる事。
販売価格にも影響します。
参考
アパレルの場合
人気シャツメーカーの「ある社長」は、以下の様に洋服の利益構造を話しています。
昔
従来のアパレル業界ではやはり中間業者が入り、日本の消費者に販売する際仕入れ値の5倍の価格で売っていました。
これは当時(高い飛行機代を払って海外にトレンドを確かめるわけにはいかない日本人にとっては)情報料として払っても良い金額でした。
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今
ただ、現在はインターネットが普及し、だれもが大量の情報を扱えるようになりました。
当然、日本人は海外のトレンドも把握しています。
故に、情報料としての価格が消費者に見合わなくなってきました。
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対策
シンプルに「シャツを作る所」と「シャツを売る所」の2か所だけで展開しました。(SPA製造小売業モデル)
こうやって見ると、洋も和も服に関しては構造が同じようです。
2.価格相場
ざっと、11種類のアイテム価格を書きます。
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帯
関連記事 >>【男の和服着物の帯結び】最大の難所を乗り越えるポイント解説!
角帯(かくおび)
角帯(かくおび→一般的な長方形の帯)は一般的な男用帯です。
男の帯は、女性物と比べてそこまで高額にはなりません。
特によく使う博多献上(はかたけんじょう→男の定番帯)は、よほどの事がない限りこの範疇です。
価格相場
5千~4万円位
(余り値引きなし。)
兵児帯(へこおび)
兵児帯(へこおび→布製のお洒落帯)は、よりカジュアルな帯です。
角帯(かくおび→一般的な長方形の帯)と違い、布で出来ており結び方もより簡単です。
主に紺色で先端が絞り加工されているものが多く、総絞り(そうしぼり)と呼ばれる全面全てに絞り加工を施すものが上等とされます。
価格相場
1万~5万円
(余り値引きなし。)
和服着物
和服着物の種類によって大きく価格が違ってきます。
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絹物
大島紬(おおしまつむぎ)
大島紬(おおしまつむぎ→主に鹿児島で作られる光沢のある生地。男の王道着物の一つ)の価値は、絣の細かさと柄の複雑さで決まります。
男性が着る大島(おおしま)は、亀甲絣(きっこうかすり⇒亀の甲羅のような柄)や蚊絣(かがすり⇒蚊のように見える細かい十字の柄)のように細かい柄が多いです。
女性物は絣(かすり→織りで模様表現する方法)が多く、さらに細かいのでもっと高額になります。
逆に縞大島(しまおおしま⇒縦縞だけの大島)や染め大島{絣(かすり⇒糸で出す柄)ではなく、染めで柄を表す大島}は比較的お値打ちで、10万円台からあります。
価格相場
20万~40万円
{羽織(はおり→和装ジャケット)分も合わせると2倍です}
御召(おめし)
御召(おめし→光沢のあるドレッシーな生地)は有名な物だと、西陣御召(にしじんおめし)、塩沢御召(しおざわおめし→通称:本塩沢ほんしおざわ)、白鷹御召(しらたかおめし)とあります。
一般的に、御召(おめし)は縞柄が多いのですが、縦横絣(たてよこかすり)で複雑なものほど高額になります。
ここでは、男物によく使われる西陣御召(にしじんおめし)を例に出します。
価格相場
15万~30万円
江戸小紋(えどこもん)
江戸小紋(えどこもん→極小柄の着物)は伊勢型紙(いせかたがみ→伝統的な型紙)を使う物だと大変高額です。
現在はプリントタイプも多く出回っております。
価格相場
10万~40万円
麻
夏の着物素材としておなじみです。
洋装と違い、和装では比較的格が高いとされます。
産地によってはブランド化されたものがあり、高額になります。
価格相場
1万~10万円
木綿
普段着に最適な綿の着物です。
一般的に絹と比べ価格はお手頃ですが、唐桟(とうざん→上等な縞の綿織物)と呼ばれる生地は物により高額です。
価格相場
1万~5万円
ウール
大正から昭和にかけ普段着に使われたウール生地です。
洋装の影響で、気楽な着物として人気を博します。
やはり木綿同様にお値段はお手頃ですが、最近は高級スーツ生地(ドーメル社など)も出回り価格も高くなります。
価格相場
3万~15万円
浴衣
男の和服着物の初心者さんには一番馴染みのある着物ですね。
既製品と反物(たんもの→巻き物)とが存在しますが、既製品は加工代が入っている価格ですので若干高めです。
素材は綿と麻がありますが、麻の方が高価です。
価格相場
1万~4万円
関連記事 >>【男の和服着物の浴衣】学生さんも必見!NG4パターンと2つの対策
長襦袢(ながじゅばん)
長襦袢の価格は生地の質、柄、加工で決まります。
絹が国産だと上がりますし、絞り(しぼり)や染めが多用されても高額になります。
価格相場
2万~10万円
袴
袴はカジュアル用とフォーマル用とが存在します。
一般的に、フォーマル用は絹100%で高額になりがちです。
特に有名な仙台平(せんだいひら→グレーの縞柄でおなじみ)はとてつもない価格になりがちです。
価格相場
2万~30万円
関連記事 >>【男の和服着物の袴】初心者でも分かる4つの種類と3つのつけ方解説
羽織紐
着物の上着である羽織をとめる2本の紐です。
組み紐を使います。
高価な石を使わなければ、平均価格は決まってきます。
価格相場
5千~3万円
関連記事 >>【男の和服着物の羽織紐】シーン用途ごとの合わせ方と2つの結び方!
足袋(たび→和装靴下)
和装の靴下で、唯一立体裁断が施されます。
既製品とオーダーがあります。
比較的良心的な価格です。
価格相場
3千~7千円
関連記事 >>【男の和服着物の足袋誂え】いつか憧れ!足袋のオーダー方法とは!?
下着
ふんどし(和装トランクス)
大きく六尺ふんどし(ろくしゃく→長方形の布)と越中ふんどし(えっちゅう→長方形の布に紐付き)があります。
価格はどれも大差ありません。
価格相場
1千~4千円
関連記事 >>【男の和服着物の褌】長方形の布で作られた健康パンツ!2タイプとは?
肌襦袢(はだじゅばん)
和装下着で上半身用です。
ガーゼ素材が多く、価格も安定しています。
価格相場
1千~2千円
裾除け(すそよけ)
着物の下半身肌着です。
巻きスカート上のものです。
価格は安定しています。
価格相場
1千~2千円
履物
関連記事 >>【男の和服着物の履物】草履・雪駄・下駄の寸法選びとTPOとは!?
草履(ぞうり)
台にクッションが入った履物です。
ピンからキリまであります。
価格相場
3千~4万円
雪駄(せった)
底に革を貼ったカジュアル草履(ぞうり)の一種で、男性専用です。
かかとに金具がついていることが多く、チャラチャラ音がなります。
こだわると金額も高くなります。
価格相場
3千~4万円
下駄(げた)
木で出来た履物で2枚歯のものが有名です。
浴衣のときによく見ますが、他の和装でも履きます。
素材が木だけに、価格は抑え気味です。
価格相場
3千~1万円
コート
和装のコートで、絹製品もありますが大半がウールで出来ています。
高級ウールでなければ、比較的安定しています。
価格相場
2万~10万円
関連記事 >>【男の和服着物のコート】まず初めに選んでおきたい色と種類とは!?
裏物(うらもの)
正花(しょうはな)
裏物(うらもの)とは、着物の裏地のことです。
特に正花(しょうはな)は一般的に綿で出来た男の裏地です。
通し裏(とおしうら→裏地が一枚の布で出来ている事)で作る事が多いです。
袷(あわせ→夏以外に着る着物)用です。
価格相場
1万5千~2万円
加工
ガード加工(汚れ防止加工)
水や油に弱い絹の着物に施す、汚れ防止加工です。
同時に汚れがついても取りやすくなります。
一度ガード加工をかけると(タグが付く為)次回のお手入れがお値打ちになる事が多いです。
それぞれのメーカーがオリジナルのガード加工を作っていますが、一番有名なのはパールトーン加工です。
価格相場
1万~2万円
関連記事 >>【男の和服着物のプロ悉皆】意外と知られていない6つのポイントは?
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3.男着物の見積もり
ざっと5つの着物・羽織・袴の料金を書いておきます。
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長着
袷(あわせ)
生地(巻き物代金)
仕立て代・・3万〜4万円
袖口布(そでぐちぬの→袖口の裏地)・・2〜3千円
正花(しょうはな→綿の裏地)・・1万5千〜2万円
ガード加工(汚れ防止加工)・・1万5千〜2万円
合計:約6万2千~8万3千円+生地代
単衣(ひとえ)薄物(うすもの)
生地(巻き物代金)
仕立て代・・3万〜4万円
背伏(せぶせ→背縫いを覆う生地)・・500円〜1千円
居敷当(いしきあて→お尻補強の布)・・3千〜5千円
ガード加工(汚れ防止加工)・・1万5千〜2万円
合計:約4万9千~6万6千円+生地代
羽織
袷(あわせ⇒夏以外の季節用)
生地(巻き物代金)
仕立て代・・2万5千~3万5千円
ガード 加工(汚れ防止加工)・・1万5千円〜2万円
合計:約4万~5万5千円+生地代
単衣(ひとえ)薄物(うすもの)
生地(巻き物の代金)
仕立て代・・2万~3万円
ガード加工(汚れ防止加工)・・1万~2万円
合計:約3万~5万円+生地代
袴(はかま)
生地(巻き物の代金)
仕立て代・・3万~5万円
ガード加工(汚れ防止加工)・・1万~2万円
合計:約4万~7万円+生地代
4.ポイント
・着物業界は定価の概念がない、礼装戦略、中間業者の存在により高い価格を維持しています
・アイテム毎に相場が存在し、特に絹製品の値幅は広いです
・着物、羽織、袴の季節ごとの仕立て代は幅が狭く、生地代金に左右されます
結論
・高価格の理由は、定価が無い、礼装にシフトした、中間業者の存在などが考えられます
・価格相場はアイテムにもよりますが、数千円から数十万するものもあります。
以上、男の和服着物の価格相場でした。
昔から呉服業界の構造も関係していますね。
古着フリークには関係ないかもしれませんが、状況は知っておいて損はないです。
もしも、あなたが呉服屋さんに行く際は参考にしてください。
和服着物modsモッズにおいて必須知識になりますね
ライン@のアカウント変更しました!(2021年2月13日)
文化bunka◉着物モッズ【独創的な男の和服着物の研究家】