男の和服着物初心者は一般的な格と種類の見分け、またTPOなどの「着るシチュエーション」に混乱します。
これは色々な要素が絡んでおり、複雑な構造になっているからです。
これを1つずつ解説すればすぐに理解できます。
結論
・格の判断は1.素材、2.着用形式、3.色柄、4.家紋でします。
・TPOは1.儀式系、2.パーティー系、3.食事系、4.観劇5.街歩き、6.近所と分けるとわかりやすいです

1, 一般的な格の解説
以前お話ししたTPOを参考にしていただくと、
↓↓↓
https://bunka5.com/wafukustyle-lv2/
【高いフォーマル度】
礼装
黒紋付羽織袴(くろもんつきはおりはかま)、
色紋付き羽織袴(いろもんつきはおりはかま)。
準礼装
色紋付き羽織袴
{袴が仙台平(せんだいひら⇒グレーの縞地)以外の生地}。
(美しい日本の婚礼 花嫁のれん 様より引用 http://hanayomenoren.net/celebrate/dress3.htm)
略礼装
羽織+着物+袴姿{御召(おめし⇒凹凸のあるドレッシーな生地名)、紬(つむぎ⇒手で紡いだカジュアル生地)}。
(美しい日本の婚礼 花嫁のれん 様より引用 http://hanayomenoren.net/celebrate/dress3.htm)
お洒落着
羽織+着物姿
{御召(おめし⇒凹凸のあるドレッシーな生地名)紬(つむぎ⇒手で紡いだカジュアル生地)のお対(おつい⇒同じ生地で仕立てた羽織着物)や異なる素材の組み合わせです}
( 男着物.com様より引用:https://www.kimonosugata.info/omesi.html)
(円居着物レンタル 様より引用https://rental.madoi.co.jp/item/4200/)
普段着
着流し(きながし⇒羽織を着ない姿)、生地は紬(つむぎ⇒手で紡いだカジュアル生地)、木綿などになります。
↑通常は帯をつけます。こちらは着付けの途中の写真なのであしからず。
【低いフォーマル度】
以上が一般的な格の説明になります。
ただし、これでは色んな要素が入りすぎて混乱しかねません。
2, 見分け方のコツ
これらは、それぞれの要素に分けて考えると分かりやすいです。
格を構成する要素とは、
・素材
・着用形式
・色柄
・家紋(かもん)
です 。
これらが組み合わさり礼装着・普段着・お洒落着を構成します。
3,要素別の解説
では個別に解説していきます。
1.素材
着物
【高いフォーマル度】
羽二重(はぶたえ⇒艶のあるドレッシーな生地)
⇧
縮緬(ちりめん⇒凹凸のシボがある生地)、御召{おめし⇒縮緬(ちりめん)の一種。男っぽい武骨さがある}
⇧
紬(つむぎ⇒手で紡いだ生地)、麻
⇧
木綿、ウール
【低いフォーマル度】
素材が後染め(あとぞめ⇒白生地の状態で染めた生地。羽二重、縮緬、御召など)になるとドレッシー。
先染め(さきぞめ⇒糸の状態で染めた生地。紬、木綿、ウールなど)になるとカジュアル。
袴地
【高いフォーマル度】
仙台平(せんだいひら⇒艶のあるグレーの縞模様が有名)
⇧
御召{おめし⇒縮緬(ちりめん)の一種。男っぽい武骨さがある}、紬(つむぎ⇒手で紡いだ生地)
⇧
木綿、ウール(一般的に木綿、ウールの袴は普段着用です。)
【低いフォーマル度】
※注意
ただし祭り儀式や行事の場合、
古代布(こだいふ⇒古くから使われる天然素材。麻など)の方が格上になる事もあります。
またポリエステル素材は、縮緬風(ちりめんふう)か紬風(つむぎふう)により、礼装から普段着まで使えます。
〈ポリエステルは化学繊維だから格下という事は全くありません。化学繊維=絹と同じ扱いです。〉
2.着用形式
【高いフォーマル度】
羽織袴姿
⇧
羽織着物姿
⇧
着流し姿
【低いフォーマル度】
基本、袴を着用すると格が上がりドレッシーです。(素材にも寄ります)
羽織+着物でも、洋服でいうところのスーツ感は十分出せます。
3.色柄
柄
【高いフォーマル度】
無地
⇧
細かい柄
⇧
大柄(低いフォーマル度)
【低いフォーマル度】
色
【高いフォーマル度】
黒(場合によっては白)
⇧
渋い色(濃い青、緑、紫、グレー、茶。淡い藤、グレー、水色、抹茶色、ベージュ)
⇧
はっきりした色(原色、ビビッドカラー)
【低いフォーマル度】
まとめると、
柄は、
大きくなるとカジュアル。
小さくなるとドレッシーです。
色は、
一般的に濃くて渋いとドレッシーです。
(淡いとカジュアルかと言えばそうでもないです。渋いかどうかがポイントのようです。)
※黒の次にドレッシーなのは濃い紫です。日本では伝統的に紫を重視してきました。(製法に時間と手間がかかる為。)
4.家紋
家紋の種類
【高いフォーマル度】
染め抜き日向紋{染め抜いた紋}
⇧
{厳密にいうと、染め抜き紋には日向紋(ひなたもん)、中陰紋(ちゅうかげもん)、陰紋(かげもん)と3種類ありますが、ここでは省きます。}
⇧
刺繍紋(刺繍で表した紋)(低いフォーマル度)
【低いフォーマル度】
家紋の数
【高いフォーマル度】
五つ紋(背縫いと、両袖の外側と、両胸)
⇧
三つ紋(背縫いと、両袖外側)
⇧
一つ紋(背縫い)(低いフォーマル度)
【低いフォーマル度】
※注意
家紋があるものは礼装です。いくら一つ紋が五つ紋等よりフォーマル度低いとはいえ、
家紋無しの物とはフォーマル度は段違いに高いです。
4、小物の格
1.履物(はきもの)
【高いフォーマル度】
白い鼻緒(はなお⇒足を引っ掛ける紐の事)の雪駄(せった⇒男の履物名)
⇧
色鼻緒(はなお⇒足を引っ掛ける紐の事)の雪駄(せった⇒男の履物名)、草履(ぞうり)
⇧
下駄(げた)
【低いフォーマル度】
2.足袋(たび⇒靴下のようなもの)
素材
【高いフォーマル度】
キャラコ(木綿の最高級素材。光沢がある)
⇧
ブロード(木綿のやや艶のある素材)
【低いフォーマル度】
色柄
【高いフォーマル度】
白無地
⇧
黒、紺無地
⇧
柄物
【低いフォーマル度】
※注意
礼装用雪駄(せった⇒男用の履物名)と足袋(たび⇒靴下のような物)は白のみOKです。
5.着ていく場所、シチュエーションと立場
礼装
1.儀式系
結婚式
大学、専門学校の卒業式
成人式
葬式
※儀式系は立場によっても服装が変わります。
黒紋付羽織袴に関して、
結婚式は花婿、花婿の父親。
葬式は喪主。
成人式、卒業式共に成人、卒業生。
準礼装、略礼装
2.パーティー系
結婚披露宴
お茶会
イベントパーティー
※結婚披露宴は友人として参加される場合。
お洒落着
3.お食事系
クラス会
食事会
4.観劇系
芝居
伝統芸能
相撲観戦
普段着
5.街歩き系
カフェ
街歩き、外出
6.近所系
コンビニ
近所の散歩
6.TPOの判断感覚
・儀式系(~式と名の付くもの)
⇒袴着用+家紋
・判断に迷ったら
⇒主催者に聞くor格の高い方の服装を選択する
結論
・格の判断は1.素材、2.着用形式、3.色柄、4.家紋でします。
・TPOは1.儀式系、2.パーティー系、3.食事系、4.観劇5.街歩き、6.近所と分けるとわかりやすいです
以上、種類と格の図解でした。
これらの組み合わせが格を決め、TPOを決めます。
これで男の和服着物の「TPOと格の見分け方」はバッチリですね。
4つの要素を使い分ければ、コーディネートにも活かす事ができます。
しっかりと復習しましょう。

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