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【男の和服着物の短編小説】新たな試み !あるメンズ着物屋の物語

更新日:

着物好きの方の初めての着物体験は意外にも遅いのですが、

イメージが固まるのはテレビの時代劇や幼稚園の七夕祭りだったりし、かなり早い段階で決まります。

今日は着物をまだお召しにならなくて、興味もない方に向けて、

着物イメージを意図的に作り出す試みをします。

文化
お急ぎの方へ

要点だけであれば、2.短編小説だけご覧下さい

1.目的と効果

目的

メンズ着物に関わる材料を提供する。

男の着物を広く知って貰うきっかけを作る。

効果

メンズ着物そのものを語るより(波及率が高く)入りやすい。

想像力を使う。

記憶に残り易い。

2.短編小説

【尾張の粋(おわりのいき)】

 

■1章 二つの名駅

「今日も遅くなるから。」
夫の正剛(マサキ)42歳はお気に入りの服で出掛けた。

私、麗花(レイカ)と知り合った学生時代から、大好きなファッションの国「イタリア」に憧れていて、挨拶は「チャオ!」。

普段からショップに通う程熱心な夫。

百貨店食品売り場の仕事の為に、あの服を着ていく訳では無い。きっと今夜も華やかな街に繰り出すのだろう。

ところが、その夜の帰りは早かった。

「仕事クビになった。」

泣きそうな顔のマサキ。

静けさの中、私は「そう」。

覚悟していた。
いつもの彼だ。

「どうする…の?」食器を並べながら言ってみる。
彼の顔を見る。

答えなくてもいいよ、答えは知ってるから。

 

数日後、桜が舞う中、名駅近くの円頓寺(えんどうじ)商店街アーケードを二人で歩いていた。

のどかな下町、気が乗らないマサキの歩みは遅い。
街のシンボル円頓寺が陽に照らされて輝いている。1654年に建立された古いお寺で門が歴史を感じさせる。

もう少しで実家だ。
家の前で振り返ると、マサキも後ろを見ていた。

視線の先には名駅の高層ビル。ほんの少し前まで、マサキはあそこに生きていた。
そして、弾き出されてしまったのだ。

■2章 新しいイタリア

実家の着物屋「東男(あずまおとこ)」は珍しく男客が8割を占めるお店だ。

私の父、光基(コウキ)は3代目でマサキとは昔からそりが合わない。

「レイカから話は聞いてる。マサキ君。君にやる気はあるのかね?」

「はい。お父さん。極力頑張ります。」
マサキは正直なのだ。腰掛け位にしか思っていない。

父は腕を組みながらマサキをじっと見つめ、今度は私にちらっと目をやった。
そして諦めたように溜息をつきながら歩いて行った。ふ~良かった。

翌日から父はマサキに着物の基礎から徹底的に教え込んでいった。

「マサキ君。着物は奥が深いんだよ。特にうちは江戸スタイル。粋な文化だ。」

「京都とは違うんですか?粋な文化って何ですか?」マサキは納得いかない気持ちを抑えながらムッとして聞いた。

「そうだなぁ。京都は女っぽいんだよな。」と父は流して言った。

マサキは反物巻きを再開しながらも、何処かで聞いた事があると思ったらしい。
マサキは父の話がイタリアンショップで聞いた話にそっくりだと言う。

イギリスは男っぽく、フランスは女性っぽい文化。そしてイタリアは、男性らしさに女性っぽさを取り入れた文化なのだとか。

彼は新しいイタリアに出会ってしまったのだ。それから仕事に対する姿勢が変わっていった。

■3章 名駅タワーと円頓寺

マサキはあれからますます着物にのめり込んでいた。父から教わるにつれ、店にある資料を読み漁るようになった。
「江戸のファッションは本当に自由だ。この国にこんな遺産があったなんて。俺は江戸の粋に京都っぽさを少し入れた色気の粋を作りたいんだ。」

夜布団に寝そべりながら、マサキは目を輝かせて言った。

「いいとこ取りだね。真ん中取って尾張の粋にしたら。」「そりゃ、いいや」

続けてマサキが「だけど…」

毎日顔を合わせる父や常連さんや取引先から業界の状況と職人たちの現状を聞かされているのだ。

「スゴイ技術なんだよ!糸や生地作りから染色技術まで!これらが途絶えようとしている。何とかしなきゃ!」

朝の出勤時。私と彼が静かな円頓寺のアーケードを歩いていた。まだ、職人やメーカーさんの顔が離れないらしい。

突然マサキが「え?」と振り返る。

その時どこからか声が聞こえたそうだ。

「お洒落なイタリア親父に知って貰えたらええんじゃよ」

近くには円頓寺商店街のシンボル円頓寺があるだけ。狐のお面が飾られている。

アーケードの外には名駅の高層ビルがいつもの様に高くそびえて立っていた。

ガラガラ。

「ごめんください。」

ちょうどお客さんのいない店内に彼らはやってきた。

夜の店内は私と父、マサキだけだった。

イタリアの綺麗な色の服を着た集団と、藍染めの着物を着たマサキ達が向かい合う。

「突然申し訳ございません。私こういう者です。」という真ん中の男性の顔をみると、

「レ、レオナの諦(アキラ)さん…」。

憧れの人の訪問にマサキは絶句している。
彼は名駅にファッションビルを建設しているアパレル会社レオナ
の若きオーナーアキラ。35歳位か、その手の雑誌の常連でマサキの通っていたショップも同じ系列だ。

特に男性向けイタリアンファッションをメインにしている。

「私の事をご存知ですか。なら話が早い。顧客に配る粗品を探してましてね。」

そう言うと、店内を見渡した。

「あれなんかどうだ?」アキラが小物の扇子を顎で指差し、部下は同意している。

専用の袋から扇子の柄まで地元有松の絞りという拘りの品だ。その時、電子音が鳴り響いた。

「じゃあ、これと同じ物を50本用意しといて下さい。出来たら連絡を。」

そう言うと、アキラはポケベルを見ながら店を出て行った。父は部下の一人と話している。

マサキは圧倒され何も話す事が出来なかった。

■4章 古き良きイタリアと新しい尾張

「とりあえず、受けようと思う。」

アキラ達が帰った夜、机を囲んで父は私達に話した。

「なんだか、上から目線で嫌な感じだね」私は言った。

「これはチャンスなんじゃないですか?」マサキは言った。

「え?」私が言った。

マサキは父と目を合わせている。

父は何も言わないでその目を見返す。

私はマサキの横顔を見つめている。

この表情を見るのは何年振りだろう。

梅雨の合間の晴れた日。
マサキ達と名駅のタワーにある本社へ扇子を納品しに行った。
「ご多忙中にすいませんね。」

父は風呂敷に包まれた大量の扇子と共に、藍の浴衣の反物を10反並べた。

「頼んでませんけど。」

会議室でふんぞり返るアキラの表情が曇っていく。

マサキは着物を知ってもらう為、敷居の低い渾身の浴衣(ゆかた)を用意した。

会議室を嫌な静けさが包む。マサキは、見るからにあがっていた。

マサキの脳裏には、イタリア男を黙らせる商品作りを浴衣の問屋さんに急ピッチで依頼した事や、常連さんと考え抜いて選品した事が蘇っているのだろう。

この浴衣と扇子は、着物屋「東男」と名古屋の着物業界「尾張の粋」の挑戦なのだ。

凄まじいプレッシャーからか足が小刻みに震えていた。

ところが、急に別人のように落ち着きを取り戻したマサキはゆっくり語り始めた。

「私も皆さんと同じくイタリアの男性に憧れていました。ですが我々の歴史には・・」

魂の言葉にみるみる関心が集まっていく。

渾身のプレゼンが終了すると、シーンとなった会議室でマサキがアキラを見つめていた。

■5章 古き良き円頓寺

ライトアップされた名駅の高層ビル。

沢山の笑い声と話声がアーケードに響く。

どんちゃん騒ぎが始まった。居酒屋から外に出て皆が騒いでいる。

円頓寺の仏前に父が徳利を置いている。そばには狐のお面。

皆と乾杯したマサキは私の横に来る。出会った頃の笑顔だ。そして目の前に父が現れ、日本酒を私たちに注ぐ。

「マサキ君。プレゼンの時ひょっとして声が聞こえたんじゃないか?」

「はい!お父さんも聞こえてたんですか?」

「いや今は…。30年前に助けて貰った事があるんだ。」と父。

実はあの時、マサキは「彼らに知ってもらえばええんじゃよ」という例の声が響き、それから憑りつかれたように夢中で話したのだそうだ。

「お父さんも知ってるの?それって誰なの?」

私が聞くと、父はそっと円頓寺の狐面を見た。

私達は再び顔を見合わせ、三人で日本酒をあおる。
お洒落な男はいつの時代も大酒飲みなのだ。

3.ポイント

・メンズ着物イメージは、テレビの時代劇や幼稚園の七夕祭りだったりし、かなり早い段階で決まる。

・着物ハードである「メンズ着物そのもの」を語るより、(着物ソフトである小説等は)波及率が高い。

・短編小説「尾張の粋(おわりのいき)」名古屋の下町を舞台に繰り広げられるメンズ着物屋の人情劇。

 

以上、男の和服着物の短編小説でした。

物語は何かを伝える時にすごく有効です。

漫画でも言える事なのですが、物語から入って貰えると、その世界観に親しみ、憧れ、身近な物として感じてもらえます。

着物に興味を持つキッカケは、こういった取り組みから始まるのかもしれませんね。

文化
目指せ!ハリーポッター!(笑)

文化bunka【男の和服着物の研究家】




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